比較経済体制研究

設立趣意書

  20222月以降のロシアによるウクライナへの侵攻と米欧日による経済制裁を契機として,米国を主軸とするグローバル資本主義に対抗する動態が新たな局面をみせている。米国主導の対ロシア経済制裁に同調しない中国は,主にエネルギー資源の貿易を媒介としてロシアとの経済的関係を強化し,米ドル以外の通貨,具体的には人民元建による決済の比率も上昇している。米国主導の経済制裁へ同調せずにロシアとの経済関係を強化する動きは中国のみにとどまらず,インドやNATO加盟国のトルコ,さらにはアジア,アフリカや中南米などの「グローバル・サウス」でもみられるが,グローバル・サウスにおいては,積極的なインフラ建設支援などによって中国への経済的依存度が上昇している。

 米国主軸のグローバル資本主義に対抗するロシアや中国においては,政治面では権威主義体制が支配的であるとともに,経済面では国家が主導する資本主義が支配的であるという共通点が存在する。ソ連の解体後に米国主導で世界全体を包摂するかにみえたグローバル資本主義は,現下,国家主導資本主義の擡頭によって転換の局面を迎えているといえよう。この転換の局面を実証的に剔出し理論的に把握するために,ソ連をはじめとする社会主義諸国における計画経済システム,さらにはソ連解体後のロシアや中国などの(旧)社会主義諸国の経済システムの動態を内在的に研究してきた比較経済体制研究にもとづく政治経済学が,今まさに必要とされている。

 問題別分科会「比較経済体制研究」は,現下の転換の局面を比較経済体制研究にもとづく政治経済学のアプローチによって解明すべく,経済理論学会と比較経済体制学会の双方に所属している会員が中心となって設立される。私たちは,1963年に経済理論学会のもとで「社会主義経済研究会」として発足した後1966年に「社会主義経済学会」として経済理論学会から独立し1993年に現在の学会名に変更されるという歴史をもつ比較経済体制学会において積み上げられてきた比較経済体制研究の蓄積を踏まえつつ,それらの蓄積を経済理論学会における政治経済学の研究成果と融合させ,国家が主導する資本主義を理論的,実証的に解明することを志すものである。

溝端 佐登史(責任者) 林 裕明(事務局長) 日臺 健雄(事務局員)

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