東京大学総長宛公開質問状

以下の2019年12月19日付東京大学総長宛公開質問状に対して,2019年12月27日付にて東京大学より回答をいただきました。

こちらよりPDFにてご覧ください。

2019年12月19日付東京大学総長宛公開質問状PDF版はこちら


経済理論学会 第2019-01号

2019年12月19日

国立大学法人東京大学 総長

五 神 真 様

経済理論学会

幹 事 会

代表幹事 河 村 哲 二

公開質問状

時下 ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

本学会は,1959年に創設された,基礎理論から現代資本主義の諸問題までを広く扱う,経済学(ポリティカル・エコノミー)の総合学会(日本学術会議協力学術研究団体)です。とりわけマルクス経済学を,現代における経済学のもろもろの流れの基幹的な部分として位置づけ,自由な研究・討論の場を設けることを目的としております。

さて,このたび日本経済新聞社が運営する「NIKKEI STYLE」の12月1日付記事(https://style.nikkei.com/article/DGXMZO52661880X21C19A1EAC000/?page=2)にて,インタビュアーである日本経済新聞社の前田裕之編集委員による「旧ソ連の崩壊後,マルクス経済学は下火になりました。」との問いかけに対し,貴学の渡辺努経済学部長が「ある時点で,東大の経済学部はマルクス経済学を専攻する専任教員は新規に採用しないという意思決定をしました。」旨,公言されております。

この発言が事実であるとすれば,当該決定は研究面での能力の如何にかかわらず特定の研究方法にもとづく研究者を組織的に排除する措置であり,学問の自由を侵害するものであります。この措置は,学術の発展を担う研究者一般において問題とされるものでありますが,特に,当該決定において排除の対象とされたマルクス経済学を研究の基幹部分に位置づけ,マルクス経済学にもとづく研究者が多数所属する学術団体として,本学会は,研究面での能力の如何に関わらず特定の研究方法にもとづく研究者を組織的に排除する当該決定に強く抗議いたします。

さらに,マルクス経済学にもとづく研究者を組織的に大学から排除する決定は,治安維持法によってマルクス経済学にもとづく研究者が弾圧を受け,大学から排除され学問の自由が失われた戦前および戦時中の日本の歴史的過ちを繰り返すことにつながりかねない措置であるという懸念を本学会は有しております。

以上の認識にたち,2019年12月14日に開催された本学会幹事会において対応を検討した結果,貴職宛に公開質問状の形式にて質問を提示し回答を要請する次第です。

回答期限  2019年12月末日

回答の様式 文書による

回答送付先 経済理論学会 代表幹事 河村 哲二

〒195-8585 東京都町田市金井町2160 和光大学経済経営学部

日臺研究室内 経済理論学会本部事務局 気付

質問内容

1. 貴学の渡辺努経済学部長による「ある時点で,東大の経済学部はマルクス経済学を専攻する専任教員は新規に採用しないという意思決定をしました。」という発言で言及された「意思決定」について,いつ,どのような手続きにて行われたのかを含め,具体的な内容をお示しください。

2. 貴学では,上記の「意思決定」によって,特定の研究方法にもとづく研究者を研究能力の如何にかかわらず組織的に排除する措置をとられておりますが,このように特定の研究方法にもとづく研究者を組織的に排除するに至った理由およびその学術的な背景をお示しください。

3. 貴学では,戦前から戦時中にかけてマルクス経済学にもとづく研究者が組織的に排除されたという歴史があります。「東京大学憲章」の前文には,「第二次世界大戦後の1949年,日本国憲法の下での教育改革に際し,それまでの歴史から学び,負の遺産を清算して平和的,民主的な国家社会の形成に寄与する新制大学として再出発を期し」とありますが,今回明らかとなった,マルクス経済学にもとづく研究者を組織的に排除する決定と上記の憲章との整合性について,貴学のご見解をお示しください。

以上