東京大学総長宛公開質問状(その2)

2020年2月26日付東京大学総長宛公開質問状PDF版はこちら


経済理論学会 第2019-02号

2020年2月26日

国立大学法人東京大学 総長

五  神   真    様

経済理論学会

幹 事 会

代表幹事 河 村 哲 二

公開質問状

時下 ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

当学会から2019年12月19日付で貴職宛に発出いたしました公開質問状にたいし,年末のご多用の折にもかかわらず迅速に2019年12月27日付で東京大学名義でのご回答をくださりましたことに,遅ればせながら感謝を申し上げます。

上記にありますとおり,このたび貴学より「事実関係を確認したところ,ご質問にある『意思決定』がなされたという事実はありませんでした」とのご回答をいただきましたが,このご回答により,日本経済新聞社が運営する「NIKKEI STYLE」の2019年12月1日付記事(https://style.nikkei.com/article/DGXMZO52661880X21C19A1EAC000/?page=2)で報じられた貴学渡辺努経済学部長による発言(「ある時点で,東大の経済学部はマルクス経済学を専攻する専任教員は新規に採用しないという意思決定をしました。」)が,事実に反するものであるということが公式に明らかとなりました。

前回の公開質問状でも言及させていただきましたが,貴学では,戦前から戦時中にかけてマルクス経済学にもとづく研究者が組織的に排除されたという歴史があります。「東京大学憲章」の前文には,「第二次世界大戦後の1949年,日本国憲法の下での教育改革に際し,それまでの歴史から学び,負の遺産を清算して平和的,民主的な国家社会の形成に寄与する新制大学として再出発を期し」とあります。貴学の「憲章」に体現されております学問の自由の尊重に高い敬意を表しますとともに,本学会におきましても,引き続き,学問の自由の発展を図るべく,努力を続ける所存です。

しかし,大変遺憾なことに,この事実に反する発言を含む記事は,2020年2月25日現在でも「NIKKEI STYLE」に掲載されつづけております。本学会といたしましては,このたびのご回答が発出されたことを契機に,貴学が当該記事に対して何らかの措置を取られるものと期待をしておりました。しかしながら,ご回答の発出からおよそ2ヶ月を経た現時点においても,貴学の要職者による事実に反する発言を記載する記事が訂正もされずに公開された状態で放置されております。このような現状は,当該発言の対象とされたマルクス経済学を研究の基幹部分に位置づけ,マルクス経済学にもとづく研究者が多数所属する学術団体である本学会として,看過できるものではございません。あらためて貴職宛に公開質問状の形式にて質問を提示し回答を要請する次第です。なお,当該発言の当事者である貴学渡辺努経済学部長宛にも,別紙添付のとおり本学会からの公開質問状をお送りして回答を要請しておりますことを申し添えます。

回答期限  2020年3月15日

回答の様式 文書による

回答送付先 経済理論学会 代表幹事 河村 哲二

〒195-8585 東京都町田市金井町2160 和光大学経済経営学部

日臺研究室内 経済理論学会本部事務局 気付

質問内容

「ご質問にある『意思決定』がなされたという事実」がなかったことが貴学によって正式に確認された以上,貴学の要職者である渡辺努経済学部長によってなされたマルクス経済学にかかわる事実に反する発言がインターネット上で日本経済新聞社によって公表されている事態が放置されたままでは,マルクス経済学にもとづく研究者が多数所属する学術団体である本学会の活動に著しく支障を来します。この事態に対応するために,直ちに日本経済新聞社にたいして訂正記事の掲載を求める等の措置を取られることを強く要望いたします。以上の要望につき,どのような措置を取られるのかを具体的にお示し下さい。

以上